まりあもね、最初は結婚を意識して、その男性と交際していたんですよ。
条件の良さもさることながら、堅実な国家公務員の家庭に育った彼は、
経済観念がしっかりしていたし、浮気の心配もまったくなかったから。
彼のほうは、最初から結婚が前提だったらしく、なにかと理由をつけては
休日にまりあを連れ出して、自分の家族に会わせようとするしね。
結婚相手として考えるには、これ以上ないほどの男性だったのですが、
交際を始めてまもなく、言動に違和感を覚えるようになりました。
たとえばね、先輩の披露宴の席に、文部大臣が来ていたのがスゴいとか、
自分の父親が、名門の社交クラブの会員だと、自慢してみたりとか。
その程度ならば、まだ許容範囲ではあるのですが、デートのときに、
高校生の妹が勉強が苦手で、進学が危うい、という話を聞いた時のこと。
「べつに専門学校でも、いいんじゃない? 女の子なんだし。。。」 と
まりあが助言したところ、「ダメだよ、専門学校なんて」 と、彼はシブい顔。
「短大ならいいけど、専門学校は学歴のうちに入らないでしょ」
そして、まりあが彼のことを、結婚相手にはならないと結論付けたのは、
社内のある男性社員がね、退職して農家を継ぐという話をした時です。
「○○さんね、会社をやめて実家の農家を継ぐんだって。。。すごいよね」
安定した大企業を退職して、実家を継ぐ決意をした男性のことを、
まりあは尊敬の念をこめて、話したつもりなのに、返ってきた彼の言葉は。。。
「いまどき農家なんて、やってもしかたないでしょ」 と、吐き捨てるように。
この人とは結婚できないな。。。と、まりあは心の中でつぶやきました。
東京に生まれ育ち、地方の暮らしを知らない彼は、農業には縁がないでしょうけど、
地方に住む、まりあの遠い親戚のなかには、農家を営んでいる人もいます。
高級官僚の父親を持つ彼にとって、農業は価値がないのかもしれないけど、
農家の人たちのおかげで、お米や野菜が食べられるんじゃないのかしら。
彼とは価値観がまったく合わないと、その時、まりあは思いましたね。
気持ちが冷めると同時に、事情があって、彼は地方の支社に転勤になりました。
これは幸いと思ったまりあはね、少しずつ、彼から距離を置くようになって、
お互いの関係が、いわゆる自然消滅するように、仕向けたんです。
まりあがなぜ、心変わりをしたのか、彼には理解できないようでしたが、
地方勤務の自分に物足りなくなったのだと、彼自身は受け取ったようです。
結果的に、ケンカ別れではなくて、穏やかに関係を解消したので、
それから2年後に、彼が地方支社から戻ってきてから、再会したのですが。。。
(次回の記事につづく)
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